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対象者 | 親族に認知症の方がいて、これから遺産分割を行う方 |
この記事では、相続人の中に認知症の方がいて、相続や手続きに不安を感じている方に向けて、
成年後見制度の利用や手続き方法についてわかりやすく解説していきます。
相続人が認知症を患っていると、原則として遺産分割協議が出来ず、相続手続きを進めることが出来ません。
手続きを進めるためには、認知症の方に成年後見人を選任し、代わりに遺産分割協議を行ってもらうことになります。
「成年後見人は何をやってくれる人?」「成年後見人を選ぶかどうかはどうやって判断すればいい?」
成年後見制度については、こうした様々な疑問が湧いてくると思います。
当ブログは、「専門家が専門用語を使わず、やさしくわかりやすく相続を解説するブログ」です。
さあ、ご一緒に勉強していきましょう!
成年後見人は「判断力が低下した人」の「立場や財産を守る」人のこと
はじめに成年後見制度とは、ご本人が認知症や知的障害などにより、適切な財産が管理が出来なくなった時に、第三者(成年後見人)を選び、本人に代わって財産の管理などを行ってもらう制度のことです。
認知症の進行などの理由により、本人が正しい判断が出来なくなってしまうと、本人に不利な契約を結んでしまったり、正しい判断が出来なくなってしまいますよね。
また、取引の相手からも、「判断能力が低下している方との取引だと、後で取り消されたり無効だと言われてしまうのは困る」との理由から、契約を交わしてもらえません。
こうした事態に備えて、成年後見人が本人のことを第一に考え、心身の状態や生活状況を考慮しながら、財産や暮らしを守っていきます。
成年後見人はこんな時に必要になる
成年後見人が必要になる具体的な場面を具体的にみていきましょう。
例えば、親や兄弟が認知症を発症した場合、かかった医療費や介護費、他にも日常の生活費などの支払いに際して、
立替払いが長く続くと、金銭的な負担も大きくなってくるため、できれば本人のお金で支払って欲しいと思うかもしれません。
本人のキャッシュカードを使って家族がATMから引き出すにしても、少額であればさほど問題にはなりませんが、
高額なお金を引き出したり、定期預金を解約する場合などは、金融機関から「ご本人の方が行ってください。」と、
本人を連れてくるように求められてしまいます。
その際、本人が窓口に出向いて事情を説明したりすることが出来れば問題ありませんが、
そうしたことが出来ないと金融機関は高額の引き出しや定期の解約に応じてくれません。
このような場面では、成年後見人を選んで、本人に代わって財産管理を行う事が公的に認められた立場の人であることを証明することによって、金融機関に必要な手続きを進めてもらうことになります。
成年後見人が必要となる場面としては、金融機関での手続きの他、以下の様なケースがあります。
判断力の無い方は、不動産売買といった高額財産に関する法律行為ができません。
不動産の賃貸管理をおこなうとき
上記の様なケースで、本人が認知症の場合は、成年後見人を選任して、本人に代わって判断や手続きを行ってもらう必要があります。
判断能力のレベルに応じて3種類の制度がある
認知症と言っても、判断能力は人によって異なります。
成年後見制度は、本人の判断能力の段階に応じて、「後見」「保佐」「補助」といった3種類の段階が設けられています。
判断能力の程度や、本人の事情に応じて、これら3種類の中から、本人に適した制度を選ぶことになります。
それぞれの制度の対象者や制度の違いについて、以下にまとめます。
一般的には「後見」を利用する方が多いのが現状です。
判断能力に応じた制度 (カッコ内は代理人の名称) | 制度の概略 |
---|---|
後見 (成年後見人) | 判断能力がほとんどなくなった方向け。 成年後見人には、財産に関するすべての代理権が与えられる。 (代理権とは、「本人に代わって、本人のためにする行為」のこと。) | 重度の認知症などにより、
保佐 (保佐人) | (同意見とは、「本人が行う行為に対して、承諾をする」こと。) |
補助 (補助人) | 本人が、補助人の同意が無く行った行為は、取り消すことが出来る。 裁判所への申立てにより、補助人に代理権を付与する事も可能。 |
後ほど詳しく説明しますが、上記の成年後見人等を一度選任すると、本人が亡くなるまで辞めることが出来ません。
第三者を成年後見人に選ぶと、長きにわたって報酬を払い続けなければならず、その負担も相当な額になります。
従って、実際の利用としては、本人の認知症が重度に進行していて、かつ不動産の売却や預金の引き出しの際に、第三者機関から成年後見人を立てるよう要請されたため、止む無く行ったという方が多いのが現状です。
よって、ここからは最も利用頻度の高い「後見」制度について、詳しく解説していきます。
成年後見人が「できること」や「できないこと」とは?
成年後見人の仕事は、大きく分けると以下の2つが挙げられます。
- 本人の身上監護(診療や介護、福祉サービスなどの利用契約を結ぶ)
- 本人の財産管理(預貯金の出し入れや、不動産の管理などを行う)
上記2つを、より具体的にみていきましょう。
後見人の仕事は、本人の財産をきちんと管理し、介護や生活面で適切なサポートをすることです。
従って、オムツを替えたり、掃除をしたりといった実際の援助行為ではなく、介護や生活面の手配を行うことです。
こうした観点で、以下の仕事例をご確認ください。身上監護と財産管理に分けて解説します。
1.身上監護の仕事 | 具体例 |
---|---|
介護サービスの利用手配 | 要介護認定申請、介護サービス事業者との契約締結、費用の支払いなど |
医療機関への手配 | 医療契約の締結、入院の手続や費用の支払いなど |
介護施設への入居手配 | 老人ホームへの入居手配や契約の締結など |
物品の購入 | 必要な品物の購入・支払い(ただし、日常の買い物は本人も可能) |
生活費の管理 | 生活費の入出金、送金など |
郵便物の管理 | 郵便物の受け取りや管理など |
2.財産管理の仕事 | 具体例 |
---|---|
金融機関との取引 | |
年金の管理 | |
債務の支払い | |
保険の管理 | |
相続手続き | |
財産状況の報告 |
上記の通り、成年後見人にはとても大きな権限が与えられています。
従って、成年後見人の選任は、家庭裁判所が行うこととなっています。
一方で、成年後見人が出来ない事も見ていきましょう。
出来ない事の全てをここで挙げることはできませんので、重要なものだけを例示します。
成年後見人ができないこと | 具体例 |
---|---|
身元保証人になること | 施設退去時や退院時の引き取り、入院や入所時の身元保証人となること。 |
医療行為に関する同意 | 手術の同意を本人に代わって行う事など。 |
上記のいずれにも共通する点としては、あくまで成年後見人は「本人の代理人」であるため、
これらの行為を成年後見人が行ってしまうと、「本人に代わって、本人が同意した事」になってしまうから、ということです。
成年後見制度の利用を考えるときの注意点とは??
ここまで見てきたように、認知症などによって判断能力が低下した本人に代わって、身の回りの手配や財産管理を行ってくれる成年後見人がいることは、本人にとってとても安心できる存在になることでしょう。
一方で、成年後見制度を利用するにあたり、制度内容をよく理解しておくことが重要です。
後になって、「成年後見制度を利用するんじゃなかった」「逆に不便になった」ということもあり得るからです。
制度の利用にあたって、特にデメリットとなりやすい点は次のとおりです。
-
本人の預金や年金を生活資金として使っていた場合、自由に引き出しなどが出来なくなってしまいます・・・。
-
本人の為といえども、株式や不動産などによる資産運用が自由にできなくなります・・・。
-
本人の財産を自由に使えなくなるため、こうした行為も制限が出てきます・・・。
- 報酬も払い続けなければならない。
-
様々な制約は、本人が亡くなるまで続きます。よって、成年後見人への報酬も、亡くなるまで払い続けなければなりません・・・。
これらのデメリットを考えた上で、本当に本人にとって成年後見人が必要かどうかをよく検討した上で判断するようにしましょう。
また、本人だけでなく、家族や親族の間でも、十分に話し合いを行っておき、可能な限り関係者から同意をもらっておくと良いでしょう。
様々な制約が発生し、更には費用も長期にわたると高額になるため、後々本人が亡くなった際の相続の場面で、
「勝手に成年後見人を付けたりしたから、財産が減ってしまったじゃないか!!」
などといったケチをつけられたりすると、折角の苦労が水の泡になってしまいかねません。
まとめ
成年後見制度の利用場面や、利用時の注意点について、お分かりいただけたでしょうか?
成年後見制度の利用を考えた時、実際に相談や家庭裁判所への申立てを行うとしても、平日日中に動かなければならない事も多く、また役所や機関ごとにやり方も違っていて、とても面倒な作業です。
当事務所では、成年後見制度の利用をご検討の方に対して、元信託銀行員の目線で、将来の相続対策等を見据えてアドバイスを低料金にてご提供させていただきます。
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